音の戦争

気を抜いていたらあっと言う間に冬になった。暖房のダクトからものすごい寒風が入ってくるので、暖房たかないとほとんど屋外みたいな寒さだが、このダクトさえなければ、暖房つけなくても過ごせるような気がする。

ここ最近のゼミは院生の発表だった。音楽学部の中でも技術に関心のある院生が集まっている研究室なので、わりと内容を理解することができた。とりあげる対象は自動ピアノ、フォーク・フェスティバル、オペラ、ロック・ギタリスト、ポスト・ロックと様々だが、方法は音楽学らしく、技術が音楽をどう変えたのかということを細かな分析で示していくという発表がほとんどだったと思う。最近わかってきたが、ここの学生はわりと社会学やカルチュラル・スタディーズに反発しているらしく、コンテクストばかり議論していたら音楽の差異が軽視されてしまうというようなことをよく話している。たしかにそうだと思うが、その方面の本をまったく読まないことや、自分の方法に疑念を抱かないのはどうかとも思う。ただ内容はともかく、みんなプレゼンがうまく、パワポもだいぶこなれているし、笑いをとるのも忘れない。先生のコメントもほとんどプレゼンの仕方にかんするものだったし、発表ゼミとはほとんど見せ方を勉強するためのものらしい。

Sonic Warfare: Sound, Affect, and the Ecology of Fear (Technologies of Lived Abstraction)

Sonic Warfare: Sound, Affect, and the Ecology of Fear (Technologies of Lived Abstraction)

最近気になっている本。affectに働きかけ、群集をコントロールする装置としてメディアを切り出し、軍事とエンターテイメントを横断する「恐怖のエコロジー」とその流用について議論している。34章もあるが、各章は4、5ページとかなり短く、コンセプトをさらっと説明しつつ、たくさん事例(音響兵器や音楽を使った拷問からレゲエのサウンドシステムまでてんこ盛りに出てくる)をあげて論じていく感じだった。affectはBrian Massumiから、ecology of fearはMike Davisから借りており、戦争・メディア・音楽についての考え方はフリードリヒ・キトラーとジャック・アタリを参考にしているようだが、さっと言及している程度だった。affectについて議論する文脈をもうすこし明瞭化してほしかったが、音楽産業のロジックの内部に自閉しがちなポピュラー音楽をその枠外から論じていること、さらに伝統的に音楽から除外されてきた情動をメディアを介して、しかもそれを音楽の政治的な問題系として議論しているのはおもしろかった。

著者はKODE9という名前でダブステップのミュージシャンとしても活躍しているが、内臓も揺れるサウンドシステムの音を浴びつづけてたら、こういう発想にいたるのもうなづける。

ついでに、彼が参照している文献も図書館で集めることにする。

Parables for the Virtual: Movement, Affect, Sensation (Post-Contemporary Interventions)

Parables for the Virtual: Movement, Affect, Sensation (Post-Contemporary Interventions)

Ecology of Fear

Ecology of Fear

そういえば、本の返却が遅れたら罰金をとられた。みんなこまめに本を管理してると思ったら、そういうことだったらしい。