文芸学研究会
今日は文芸学研究会という文学を中心とした研究発表がうちの学校であった。文学に関するものはともかくとして、アルフレッド・ヒッチコック≪知りすぎていた男≫の音声・音楽に関する発表があったので、その感想を少しだけ。場所と音楽に関してとりあえず一回休み。
発表者の狙いは従来論じられることが少なかった映画の音が映画にとってどのような役割を果たしているかを再考すること。特にこの発表では≪知りすぎていた男≫の1シークエンスにおける「並行編集」を分析していた。発表者によれば、シークエンスの状況を説明するかのような過剰な音楽の使用は、このシークエンスにある種の「冗長性」を生む。音楽の最後に鳴り響くシンバルの音に合わせて暗殺者が発砲することを観客は知っているため、そのシンバルの音を待ち続けながら、説明的な音楽と場面の一致を見続けなければならない。発表者によれば、この「冗長性」がクライマックスのシンバルに向けてサスペンスの効果を高め、観客の不安を増大させていく。キタ、キタ、キタ、ヤバイそろそろ撃たれる、どうなるというわけだ。
個人的には、この作品で使われていた音楽が映画内では楽譜によって媒介され、レコード化されたクラシック音楽だということがやはり重要なのではないかと思う。音楽作品としての同一性、明確な始まりと終わりがあることが、クライマックスに向けた緊張を高めているのだとすれば、この映画は音楽にまつわる文化的コードをうまく利用している気がする。≪フィフス・エレメント≫でも宇宙人が歌うテクノ音楽のようなオペラと、他の空間で起きているアクションとが並行編集されていたが、ヒッチコック作品とはまったく異なった効果を担っていたように思う。映画音楽の効果を比較しながら検討してみるのもいいかもしれないというか、してくれたら面白いと思う。
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