複製時代のフォークロア
『ブルース 複製時代のフォークロア』のサブタイトルから未だ抜け出せず、彷徨している。
音楽の流通・受容の形態は、高級音楽・民俗音楽(あるいは民衆音楽)・大衆音楽の三つに大別されるとそこここでは飽きもせず、繰り返されてきた(例えばジャック・アタリ『雑音』においても)。では先に紹介したブルース、複製技術が導入されてはじめてアメリカの多くの黒人のフォークロアとして成立したような音楽あるいは僕が扱っているような民謡は、どこに位置づけるべきなのか。ポピュラーミュージック研究ではこうした微妙なポジションに置かれた対象は議論の俎上に乗せられない。それは民俗音楽研究でも同じである。この微妙なポジションを読み解く術は、現在ドジョウ掬いで模索中だが、複製時代の民謡やワールドミュージックと呼ばれるローカルな音楽の群の面白さは、その立ち位置の流動性にあるのかもしれない。民俗という局所的な対象と大衆という範囲の特定しがたい対象の間で、それらがどう立ち回るのか、「複製時代のフォークロア」への一つの解答として、その流動性というか立場の揺らぎ方を生かしながら書いていきたい。けど、うーん、なんだかすっきりしない。
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