ひたすら暗い

ブルース―複製時代のフォークロア

ブルース―複製時代のフォークロア

ほったらかしていた本を読む。「複製時代のフォークロア」というサブタイトルが付されているが、その意図はいささか曖昧だった。誰にとってのフォークロアなのか、どのような意味でフォークロアなのか、複製技術とフォークロアとの関係は、といろいろと気になる点が湧いてきつつ、それが解決されないまま読了してしまった。音楽面や歌詞の分析が中心となり、流通や商業的な戦略などをあまり論じていなかったことが、この消化不良の主な原因のように思う。

1920年代のレコード化されたブルースは主に黒人の間でというよりは、黒人の間でだけ流通していたようだ。そうした音楽産業の状況とは対照的に、スミソニアン博物館は同年代にブルースを黒人の民俗音楽として録音・採集している。白人と黒人の間のブルース受容のこうしたギャップこそが、複製時代のフォークロアを論じる上で鍵となるのではないだろうか。資料などがないし定かではないのだが、黒人音楽としてのブルースの自意識や、白人に対しての振る舞い方などをもっと際立たせて欲しく思った。ただブルースの音楽面での変遷を辿る上では参考になる本だと思う。