アナリーゼ

音楽分析をしこしこやる。アナリーゼとは音楽学の人が分析という時に使う言葉だが、なぜドイツ語なんだといつも不思議に思う。それはおいといて。

中山明慶「安来節考」という曖昧な名前の論文が安来節の音楽分析をやっているので、それを参考にしつつというか、ほとんど乗りながらまとめていく。とりあえず、ここが終われば議論はすべてそろうはず。
安来節の音楽的側面の特徴はざっとまとめると三点。

1)音高が徐々に高くなっている
2)歌唱が技巧化している
3)速度が低下している

ともかく、ものすごい難しい歌になったということ。「やすぎ〜」という出だしで始まる歌は、「ぎ」の音高が最も高いが、戦後になるとことの音の持続音は戦前の二倍以上になり、「小節」と呼ばれる独特のビブラート(演歌でよく聞くあれです)が使用される。この特徴は明治44年に開始される安来節大会とそこでの競合によって始まったのではないかと中山は論じていた。ともかく、人前であるいはレコードの聴衆に向かって音を発するということが安来節に影響を与えたのは確かだろう。『日本レコード文化史』によれば、明治44年頃にも「やすき節」(一般的に安来節の正しい読み方はやすぎぶし)という名前でレコードが出版されていたようだが、それは後のものに比べると非常に単調で旋律の抑揚もあまりなかったようだ。呼称も正しくないことから、それが安来の安来節であるかどうかは分からないが、少なくとも大正期に出版される正調安来節のレコードとは大きく異なっていたものと考えられる。中山氏は自分で記譜法まで開発して安来節を視覚化しているが、こういう努力をちゃんとするべきだったと今さら後悔している。アナリーゼはこれからの課題。