論文

Turning The Century: Essays In Media And Cultural Studies (Cultural Studies.)

Turning The Century: Essays In Media And Cultural Studies (Cultural Studies.)

Jonathan Sterne, "Sound Out of Time: Modernity's Echo"
主に20世紀初頭アメリカにおいて、文化的差異にかかわるモダニティの時間表象と複製技術の関係を考察している。スターンは録音再生技術をモダニティの中に位置づけている。スターンによれば、20世紀の転換期において、録音再生技術は相互に関係する二つの時間の形象化に関わっていた。ひとつが客体化、反復、交換が可能なものとしての現在の時間感覚であり、もうひとつが線的かつ無際限なものとしての歴史的な時間感覚である。一方では現在のたえまない分割と反復が起こり、他方では過去が現在へと向かう進歩の過程であり、現在を見通すための定点として固定されていたのである。こうした時間の表象において、録音されたレコードはその物質的な基盤として中心的な役割を果たしていた。それは時間を測定可能で交換可能な抽象的な単位(アタリの言うところの交換時間)にかえると同時に、レコードというモノ相互の配置と連関によって進歩的な時間を表象することを可能にしたからである。民族音楽の研究において蒐集されたレコードは、時間性を喪失した過去の諸断片であり、それらは進歩の過程にあるモダンを支えるために相互に関係づけられ、アーカイブという現実の空間に再配置されていくことになる。これが論文の主な主張だと思われる。論文の後半部分では、実際の研究例を引き合いに出しつつ、そうした歴史表象の方法が具体的に議論されている。