アメリカン・ジョーク?

ゼミの間でたまに飛び交うアドルノについてのジョークが気になる。何を言っているのか、何が面白いんだかよく分からないが、あまりいい笑いではないことは分かる。ちょっと気になったので後でアドルノってどういう扱いなのか聞いてみたら、この国では絶対的に同意するか、絶対的に反発するかどっちかしかないんだと言っていた。具体的にどういうことなのかよく分からないが、やはり研究対象によって意見が分かれるそうだ。ポピュラー音楽研究でのアドルノの参照の仕方がずっと気になっているので、図書館で関連書を探してみる。小川博さんはアドルノはポピュラー音楽研究の「踏み絵」のようなものだと言っていたが、たしかにみんな踏まないと安心できないというか、とりあえず踏んでおいたら安心という態度をとりつつ、ネガティヴな形で依存しているような気がする。

アメリカで学生が必ず読む音楽系のアドルノ論集を聞いたら、これを薦められた。

Essays on Music

Essays on Music

編者のRichard Leppertによる解説もついている。残念ながらこれは貸し出し中だった。渡辺裕さんが監訳している音楽・メディア論集に載っているものとわりとかぶっている。訳者の方に聞いたところ、音楽・メディア論集はThomas Y.Levinの"For the Record: Adorno on Music in the Age of Its Technological Reproducibility"で紹介されているものを参考にされたらしい。この紹介論文ももういちど読んでおこう。

考えてみたら、英米圏でも日本でもわりとたくさんの翻訳が出ているのに、ポピュラー音楽の分野で参照される著作は非常に限られている。音楽・メディア論集が出てからも日本でそれに載っている論文を参照している人は見たことがないし、英米の論文でも管見の限り「針のカーヴ」論を書いているBarbara Enghの"Adorno and the Sirens”くらいだと思う(たしか以前に紹介した)。

この本も参照されているのを今のところ見たことないが、ポピュラー音楽の分野でアドルノ論をメインにしている研究者は少ないのでチェック。タイトルがいかしている。

Roll over Adorno: Critical Theory, Popular Culture, Audiovisual Media (Suny Series in Postmodern Culture)

Roll over Adorno: Critical Theory, Popular Culture, Audiovisual Media (Suny Series in Postmodern Culture)