脂肪に流れる時間

映画理論の授業の関係でマイケル・ムーア監督の≪ロジャー&ミー≫(1989)を見る。

ロジャー&ミー [DVD]

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ムーア初監督の作品で、彼の故郷フリントがジェネラル・モーター社のリストラによって荒廃していく様を、同社会長との最終的な邂逅に向けて描いていくというドキュメンタリーだった。ドキュメンタリーというジャンルに数えられるとはいえ、この映画は非常に物語的だ。

映画内で彼は太ったりやせたり、体格が急激に変化する。この映画が現実の時間軸(二年間でずいぶん太りましたね)を忠実に追ったものではないことを、彼の脂肪は証明する。最後になってようやく叶うロジャーとの邂逅に向けて、社に対する観者の憤りは何度もはぐらかされ、その都度高められていくように編集されている。非常にシンプルな主張にも拘わらず、2時間飽きずに見せるというのは、物語構築のうまさなのだろうか。それにしても敵を作るのがうまい、あるいは好きな監督だ。