太陽

六甲ライナーに乗ってアレクサンドル・ソクーロフ監督の映画≪太陽≫を観に行ってきました。甘いポップコーンの香りの漂うMOVIXへ。ここだけは何処へ行っても同じ匂い。
公式サイト→http://taiyo-movie.com/


誰も現実を知ることができない/できなかった天皇の日常性を、映画で表象しようという試みには問題もあると思うが、面白かった。そもそも日本での公開が可能になったこと自体、すごいことだ。ブログで軽く感想を書くには憚られるテーマなので、始終気になった音について少しだけ。

 混線するラジオの音、地下壕を歩く時に水がたてる音、空気浄化機が起動する音、天皇の発話に重なる持続する電子的なパルス音、ときおり聞こえる戦闘機の飛行音。それらの音は皇居の内部と外部との境界を侵犯するノイズであり、前半部には皇居から出ることのない天皇と鑑賞者にとって外部世界とのつながりを意識させるほとんど唯一の情報だった。こうした音の使用は<人間>として自らを主張しながらも、<現人神>というシステムによって皇居外部から隔絶され、両者の間で宙づりになってしまうヒロヒトのあり方(<人間>にはなりきれない)をより強調していたように感じた。

 それにしても最近の映画は聴覚的空間の編集が非常に細かく(音との距離・方向性)、映画館の音響もかなりの資金を投入している。音に関してはやはり映画館に行って聞く方が楽しめるかもしれない。